「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い」に係るパブリックコメントの実施について”ーやたら長ったらしいネーミングですが要するに「日本版ライドシェアに係るパブリックコメント」、3月9日まで意見の受付がされています。

ライドシェア全面解禁派の川邊健太郎氏などがX(ツイッター)を通じてパブコメ送付を呼びかけているせいか、さながら組織票の様相を呈してきています。

弊社においてもタクシー事業者としてパブコメ送付いたしましたので、以下内容を開陳させていただきます。一読いただければ分かるとおり、パブコメ後半は日本版ライドシェアとは直接関係のない「ソウルフルな叫び」的内容となっており非常に気恥ずかしい内容となっておりますが、これからパブコメ送付いただく皆様へのご参考になればと思い全文を公開させていただくこととしました。

自分で書いておいて恐縮ですが、非常に冗長な文章ですので以下要旨をまとめました。要旨のあとに全文を配置しております。好事家のみ最後までお読みいただけますと幸甚に存じます。なお、同パブコメは2024年2月25日に国交省へ提出済みであることを申し添えさせていただきます。

パブリックコメント送付は以下サイトから
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155240909&Mode=0

(要旨)

・日本版ライドシェアについては賛同する。タクシー会社が乗客安全と乗務員の雇用を担保しつつ、タクシーを補完する目的で自家用車・一般ドライバーを活用する施策は有効。

 

・他方、いわゆる「米国型ライドシェア」は、事故・犯罪が多いうえに、働き手の保護が不十分であるため問題点が多いと言わざるを得ない。日本においても、安全面・防犯面での懸念は勿論、いわゆる「ワーキングプア」を生み出す温床となる恐れもあることから、米国型ライドシェアの解禁には断固反対。

 

・都市部を中心にタクシー乗務員数は増加している上に勤務シフトの変更等によりタクシーの供給力は改善傾向。タクシーが捕まりづらい状況に対応する諸施策の効果検証は十分な期間をかけるとともに、データに基づき公平・慎重かつ丁寧に行うべき。

 

・日本のタクシーで法外な運賃を請求されることや犯罪に巻き込まれることは皆無といってよく、ライドシェア導入の起点となる日本のタクシーの水準が海外と比べものにならないほど高いという視点が無視されたまま米国型ライドシェアを導入しようとする動きがあることは誠に残念。

 

・タクシー既得権者を排除するのであればタクシーの規制緩和を行えばいいのでは。ところがここにきて屋上屋を架すかのような米国型ライドシェアの導入が強引に推し進められようとしている。この米国型ライドシェアが「新たな利権」になりうる存在であることについては議論された形跡がほとんどないことは誠に興味深い事象。

 

(全文)

*当意見では便宜的に法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送を”日本版ライドシェア”、最終責任を負わない配車プラットフォームと業務委託契約を結んだ一般ドライバーによる自家用車運送配車サービスを”米国型ライドシェア”と表記しております。

 

・日本版ライドシェアについては賛同いたします。タクシー会社が乗客安全と乗務員の雇用を担保しつつ、タクシーを補完する目的で自家用車・一般ドライバーを活用する施策は有効であると考えます。

 

・他方、いわゆるプラットフォーマーによる一般ドライバーへの業務委託契約に基づく自家用車による運送サービスである「米国型ライドシェア」は、仲介するプラットフォーマーが運送の最終責任を負わないことから事故・犯罪が多いうえに、働き手の保護が不十分であるため問題点が多いと言わざるを得ません。事実、海外においては従前から報じられているような事故・犯罪の多発に加え、ライドシェアドライバーのストライキのニュースも耳にするようになりました。
日本においても、安全面・防犯面での懸念は勿論、いわゆる「ワーキングプア」を生み出す温床となる恐れもあることから、米国型ライドシェアの解禁には断固反対いたします。

 

・都市部を中心にタクシー乗務員数は増加している上に勤務シフトの変更等によりタクシーの供給力は改善傾向にあります。また、ニセコや軽井沢といった観光地では期間限定でタクシー車両・乗務員を他営業圏から派遣し、ラストワンマイルの足を確保する取り組み(所謂ニセコモデル)がスタートするなど、今まででは見られなかった供給不足対策が行われるようになりました。さらには「活力ある地方を創る首長の会」がタクシー優先配車の仕組みを取り入れるライドシェアシステムを発表するなど、都市部、観光地、地方それぞれでタクシー供給に関する諸施策がスタートしております。
タクシーが捕まりづらい状況に対応する諸施策の効果検証は、2024年6月までの限られた期間ではなく、諸施策の効果が発現するまで十分な期間をかけるとともに、データに基づき公平・慎重かつ丁寧に行っていただきますようお願いいたします。

 

・そもそも欧米・アジアでライドシェアが普及した背景には、現地の既存のタクシーの量・質に問題があったことが大きいと思われます。海外のタクシー事情は、日本とは異なっていて、手配してもすぐには来ない、メーターを使用せずに法外な運賃・料金を請求する、領収書を発行しない、犯罪に巻き込まれるなどといった問題点が指摘されていました。米国型ライドシェアは、利用者の多くが不満・不安に感じる海外のそうしたタクシー事情に着目して開発されてきたのです。
他方、日本のタクシーで法外な運賃を請求されることや犯罪に巻き込まれることは皆無といってよく、ライドシェア導入の起点となる日本のタクシーの水準が海外と比べものにならないほど高いという観点が無視されたまま米国型ライドシェアを導入しようとする動きがあることは誠に残念なことであります。

 

・一部識者の方にタクシー事業者を「既得権者」として排除すべき存在であるとする傾向が見られます。何をもって「既得権者」と規定しているのか判然といたしませんが、タクシー既得権者を排除するのであればタクシーの規制緩和を行えばよろしいのではと愚考いたします。
ところがここで、ここにきて屋上屋を架すかのような米国型ライドシェアの導入が強引に推し進められようとしています。この米国型ライドシェアが「新たな利権」になりうる存在であることについては議論された形跡がほとんどないことは誠に興味深い事象であります。


以上